市場の審判はいかに
新たに自民党総裁に選出された高市早苗について、当面懸念されるのは日本の金融市場の動向であろう。同氏が勝利すれば日本国債の価格が下落するとアナリストが予想するのは、その表れである。
高市が崇敬するマーガレット・サッチャーといえば、国有企業の民営化、規制緩和、付加価値税の増税といった市場原理に基づく改革を思い起こさせる。だが、高市の掲げる公約はそれとは真逆と言っていい。物価高に対応するためだとして、積極的な財政出動を約束する一方で、利上げは「あほやと思う」と公言して憚らない。金融市場が不安視するのも当然である。
高市は先輩である安倍晋三の経済政策を継承する考えらしい。だが、「アベノミクス」は慢性的なデフレ脱却のカンフル剤にはなっても、根本的な解決には寄与しない。日本経済が応急処置に頼る時期はとうに過ぎているのであり、歳出の削減と賢い支出とを同時に進めることは喫緊の要請なのである。その現実から目を背ければ、もしかしたら彼女はサッチャーどころか、リズ・トラスの二の舞になるかもしれないのだ。