2023年9月9日

歴史の第一稿

事実の記録がジャーナリズムの役割


ジャーナリズムの「ジャーナル(journal)」はフランス語のjour「日」に由来する。つまり、日々の記録というのがジャーナリズムの本義である。航海の日誌や簿記の仕訳帳をjournalと呼ぶのも同様の理由による。したがって、『ワシントン・ポスト』の発行者であったフィル・グラハムが広めたことで有名な「ニュースは歴史の第一稿」という言い回しは至言である。

ニュースが歴史の一ページ目だとしたら、報道記者に求められるものは歴史家に要する資質と変わらないということになる。すなわち、エドワード・カーが言ったように、「事件が実際に起らざるを得なかったかのように、また、何が起ったか、なぜ起ったか、それをただ説明する」11. エドワード・H・カー(清水幾太郎訳)『歴史とは何か』(岩波新書)、1962年、142頁。ことに徹する、という姿勢である。

而して、一部の記者くずれが言うような、権力批判やら権力監視やらを報道に期待するのはお門違いというものである。仮に報道が権力に与える影響があるとすれば、それは事実の記録による牽制という副次的な効果以上のものではない。この点を履き違えて、権力批判を優先するあまり、事実をげる連中の何と多いことか。

 

1. エドワード・H・カー(清水幾太郎訳)『歴史とは何か』(岩波新書)、1962年、142頁。



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