2023年9月16日

自分も生き、他人(ひと)も生かす

腐敗生む産業界のもたれ合い

東京赤坂のジャニーズ事務所本社 (CC BY-SA 4.0) Beryllium Transistor

芸能プロダクション、ジャニーズ事務所創業者の喜多川ひろむ(故人)による性的虐待をめぐっては、1950年代から2010年代にわたって加害実態のあったことが、事務所設置の特別チームによる報告書で認定された。異様なのは、これだけ長期間続いていながら、どのマスメディアも沈黙を貫いてきたことである。唯一正面から取り上げたのは『週刊文春』だが、同誌と事務所とが訴訟沙汰になっても、他のメディアは総じてだんまりを決め込んできた。それなのに、英BBCの番組で表沙汰になると白々しい辯明を繰り出す体たらくには、開いた口が塞がらぬ。

中古車販売会社ビッグモーターによる保険金水増しを看過してきた損害保険会社も同類のものである。特に大手の損害保険ジャパンは、疑惑が発覚してもなお、2022年7月にビッグモーターとの取引を再開したという。

左顧右眄さこうべん的な対応をもたらしたのは、利害を共にする者同士の過度な依存関係である。ジャニーズ事務所の一件では、喜多川の犯罪行為を報ずれば、事務所から演者を出してもらえなくなるとの遠慮がマスメディア側にあったと言われている。ビッグモーターをめぐっても、代理店取引を担う同社からの反撥を恐れ、不正追及に及び腰になったことを損保ジャパンは認めた。

片や制作力の欠如、片や大口取引先への偏重。経営においても不適格な者らが、卑しい寛容さから業界で結託して互いに助け合い、各々が仲間を辯護する。こうして、末端の消費者が最も割を食うことになる。

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