トランプ政権の関税政策は、現代経済における自由貿易体制に対する大きな挑戦として位置づけられる。その思想的背景としてしばしば指摘されるのが、重商主義との親和性である。とりわけ、貿易赤字を国家的損失とみなし、関税によって輸入を抑制し輸出を促進することで国力を回復しようとする発想は、重商主義的な貿易観と強く重なっている。しかし問題は、そうした発想が、歴史的に批判されてきた重商主義の誤謬を、形を変えて再生産している点にある。

重商主義の誤謬の中核の一つは、国家の富や経済的健全性を対外関係、すなわち貿易収支のみによって評価し、国内経済、とりわけ内需の役割を軽視する点にあった。重商主義は輸出拡大と金銀流入を重視するあまり、国内での消費や生活水準の向上を副次的なものとして扱った。その結果、国庫は潤っても国民経済は停滞するという矛盾を内包していた。トランプ政権の関税政策にも、同様の構図を見出すことができる。