2023年7月15日

同性関係を婚姻制度にねじ込むな

原理に応じた権利保護を図れ

「同性婚」を認めない法規定の違憲性を問う集団訴訟は、現在全国で6件提起されている (CC0)

異なる血液型の血液を輸血に使うと、患者を死に至らしめる。同様に、原理の異なる事象に制度を適用させると、社会に機能不全を来す。現行の婚姻制度を同性間の関係に認めてはならない理由はここにある。

婚姻制度は何のためにあるか

文化や宗教など様々な位相を有する婚姻の、世俗における目的とは何か。言うまでもなく、教会の神父や牧師のごとく国家がつがいを祝福するためではない。

異性関係と同性関係とで性質を異にするもの、それは生殖の有無に外ならない。生物学的に、孕ませる器官を有するのが男の、子を産む器官を有するのが女のそれぞれの定義なのだから、これは当然のことである。ヒトが哺乳類で有性生殖である以上、新たな個体を生ぜしむには、一対の男女の結合によるより外はない。この確たる生物学的現象を基に、あらゆる文化において、集団の中で一定の形式を維持する慣習が形成されるに至った。これこそが婚姻と呼ばれるものである。したがって、婚姻とは専ら異性関係に当てはまるもので、「同性婚」というのは語義矛盾である。

一定の形式を維持するようになったのは、新たな個体の誕生が生活にあらゆる影響をもたらすからである。そもそも、出生は身分そのものの発生であるから、その事実を公に認定せねばならない。また、新生児は極めて無力な状態であるから、親が一定期間養育する義務が生ずる。その後も、子の成熟に応じて自立までを見届けることが必要である。この点から、両親と子が共同生活するのが望ましいことが了解される。親子の安定した関係を維持する観点から、嫡子の認定も必要となろう。以上から、男女とその間に生まれる子には、養育を前提とした一定の身分上の関係性を有するものとして、他とは区別されることになる。そして、身分上の関係性に依拠して、様々な財産上の権利も想定されることになる。

そこで、男女の結合及びそれに伴う子の出生という自然現象を基底に、そこからもたらされる核家族を一つの基礎的な社会集団として包括的に権利保護を与えて公示することが、社会から要請される。これこそが婚姻制度の狙いである。またこれは、「原罪」へのあがなとしての形而上学的及び倫理的な観念を根柢に据えるものでもある。

日本国内の訴訟において、「自然生殖可能性を基礎として」婚姻制度の適用範囲を定める11. 大阪地方裁判所平成31年(ワ)1258号第11民事部判決、49頁(2023年7月14日閲覧)。とする国側の主張も上記に立脚したものである。生殖という語に反応して、子を産めない者は結婚するなということか、と憤怒の声を上げる者たちがいるが、短絡的なりょうけんと言わざるを得ない。婚姻制度は、生殖そのものを直接の目的としているのではなく、それが生み出す種々の権利関係を保護することを目的としているからである。

繰り返すが、一口に婚姻と言ってもそれに付随する行為は実に様々である。共同生活、出産、養育、介護、相続、等々。全てではないにせよ、婚姻関係を結べばこのうちいずれかを必ず経験することになる。個別の事例では出産や子の養育を経験しない場合も当然あるが、それは男女及び親子関係を根柢に置いている事実を妨げるものではない。それらの関係によって予定される法的効果の数々をまとめて保護する、というのが婚姻制度の趣旨である。先に「包括的に」と書いたのはこのためである。

現行の婚姻制度を同性関係に開放することの懸念

新たな個体を生ずることのない同性関係に婚姻制度を開放することは、養育を前提とした一定の身分関係の保護という同制度の目的を失わせることを意味する。この目的が失われれば、同様の趣旨で設けられている一夫一婦制や重婚禁止、嫡出推定などの規定も形骸化してしまう。

そうなれば、今後生まれてくる子らは、極めて不安定な立場に置かれるだろう。嫡子と庶子との区分も曖昧になり、相続などの財産的権利が毀損されることも考えられる。

そもそも、血統の絶えることが明白なのに、同性たる相手の家系を姻族とすことに何の意味があろう。形而上学の観点から見れば、同性愛は生殖から切り離された当人の快楽に留まるものであることを忘れてはならない。

同性関係の諸権利は擬制によって保護できる

近年、親密な同性関係が市民権を得るにつれて、婚姻制度のもたらす法的効果の一部が同性関係にも要する場面があることがクローズアップされている。しかしながら、これまで同性が家族に相当する関係を構築することは想定されていなかったため、それを公証する手段を現行法は欠いてきた。この問題は、新たに制度を設けて、人為的に法的効力を発生させることで解決できる。つまり、擬制による制度の実現である。

擬制(legal fiction)とは、本質が異なるものを同一と看做し、同等の法的効果を与える法律上の取り扱いである。例えば、養子縁組、成年擬制(旧民法)、失踪宣告などがある。

現在、同性同士が家族相当の関係を構築するために、自治体独自のパートナーシップ制度、公正証書による契約の締結などの手段がある。だが、自治体の制度には法的効力がない、公正証書は費用がかかり手続きが煩雑であるといった課題がある。こうした手段を簡素化して、制度へのアクセスを容易にするのが、最も現実的な解である。

今のところ裁判所も同様の判断といっていい。活動家たちは新聞の見出しだけを見て、判決が出ては違憲だの合憲だのと騒いでいるが、実際の各地裁判決は、現行の婚姻制度が異性関係及び生殖を前提としており、変更が容易ならざるものであるとの見方で大方一致している。問題は、代替の制度すら整備されていない現状であり、それが立法不作為なのか民法などの諸規定が違憲なのかといった違いでしかない22. 「同性婚訴訟」、和み法律事務所、2023年5月31日(2023年7月11日閲覧)。。いずれにせよ各地裁の判断は、同性関係にも法的保護、とりわけ公証に関わる効果を何らかの手段で確保するよう要請しているものといえる。

 

1. 大阪地方裁判所平成31年(ワ)1258号第11民事部判決、49頁(2023年7月14日閲覧)。
2. 「同性婚訴訟」、和み法律事務所、2023年5月31日(2023年7月11日閲覧)。

 


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