……土は汝のためにのろはる。
汝は一生の間勞苦くるしみてそれより食を得ん。
土は荊棘いばらあざみとを汝のために生ずべし。
また汝は野の草蔬くさを食らふべし。
汝はかほに汗して食物を食らひ、つひに土に歸らん。
そはその中より汝は取られたればなり。
汝は塵なれば塵にかへるべきなり」

──『創世記』第3章

アダムとエバがエデンの園を追放されて以来、人類は死すべき運命を背負い、苛酷な茨の道を歩むという苦役を課せられることとなった。そして現代では、この呪いから逃れようと、あらゆる国でエデンの園を復活させようとする試みがなされている。しかしその成果は芳しくないのだ。確かに、世界は物質的には豊かになり、民には日常生活の安定がもたらされ、政治的自由が付与されるようになった。だがそれに伴って、主体性に欠ける不完全な主権者が、我が物顔で街中を闊歩することとなったのだ。高度に発達した文明の中に突如として現れたこの新しいアダム、新しい野蛮人は、まさに「甘やかされた子供」(オルテガ)そのものの態度でもって、人間生活のあらゆる場面、就中なかんずく道徳面において、深刻な頽廃をもたらしつつあるのである。